高齢者重点型から少子化社会対策の強化を
社会保障給付費を対象者別にみると、2002(平成14)年度では、高齢者関係給付費(年金保険給付費や老人医療費、老人福祉サービス等の給付の合計)が58兆円と、全体の約7割を占めている。
子ども や現役世代に対する給付費は25兆円、全体の3割となっている。
後者のうち、保育所 運営費や児童 手当、児童 扶養手当など、児童 ・家族 関係給付費に限ってみると、2002年度では3.2兆円で、全体の3.8%にすぎない。
高齢者関係給付費と比較をすると、約19分の1の水準である。
仮に、高齢者関係給付費を65歳以上人口で除し、児童 ・家族 関係給付費を15歳未満人口で除するとすると、1人当たり給付費では、高齢者は約247万3千円、子どもは約17万4千円となる。
| 年度 | 高齢者関係給付費(億円) | 高齢者関係給付費/社会保障給付費 (%) | 児童・家族関係給付費 (億円) | 児童・家族関係給付費/社会保障給付費 (%) | 社会保障給付費(億円) |
1975(昭和50) | 38,754 | 32.9 | 6,608 | 5.6 | 117,693 |
1980(55) | 107,514 | 43.4 | 11,197 | 4.5 | 247,736 |
1985(60) | 188,287 | 52.8 | 14,513 | 4.1 | 356,798 |
1990(平成2) | 279,262 | 59.1 | 15,986 | 3.4 | 472,203 |
1995(7) | 407,109 | 62.9 | 21,369 | 3.3 | 647,314 |
1996(8) | 430,785 | 63.8 | 23,615 | 3.5 | 675,475 |
1997(9) | 451,401 | 65.0 | 23,258 | 3.4 | 694,187 |
1998(10) | 478,041 | 66.3 | 23,997 | 3.3 | 721,411 |
1999(11) | 503,564 | 67.1 | 24,972 | 3.3 | 750,417 |
2000(12) | 531,982 | 68.1 | 27,419 | 3.5 | 781,272 |
2001(13) | 559,517 | 68.7 | 30,133 | 3.7 | 814,007 |
2002(14) | 584,379 | 69.9 | 31,513 | 3.8 | 835,666 |
| 資料:国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付費」 |
年金受給者の増大、老人医療費や介護給付費の増大で高齢者関係給付費が増大するのはやむを得ないとしても、ヨーロッパ諸国の社会保障給付の対象者別構成割合を見ても、日本の場合には高齢者給付に偏っているということができる。
社会保障の給付と負担の見通し
厚生労働省が2004(平成16)年5月に発表した「社会保障の給付と負担の見通し(平成16年5月推計)」によれば、社会保障給付費は、2004年度(予算ベース)の86兆円から、2010(平成22)年度には105兆円、2015(平成27)年度には121兆円、2025年度には152兆円に増大すると予想されている。
対国民所得比は、2004(平成16)年度の23.5%から2025年度には29.0%に増加する。
社会保障給付費が増大する理由は、今後とも、年金給付の増大や老人医療費を中心とした医療保険給付の増大、介護給付の増大などが見込まれているからである。
一方、社会保障負担も増大し、2004年度の78兆円(対国民所得比21.5%)から2010年度には100兆円、2015年度には119兆円、2025年度には155兆円(同29.5%)と、今後約20年間で、約2倍に増大すると予想されている。
現在の社会保障負担は、年金制度に典型的に現れているが、現役世代の保険料負担が高齢者の給付にまわる構造となっている。
ちなみに、厚生労働省の推計によるサラリーマンの社会保険料率をみると、年金、医療、介護、雇用保険の4つを合わせて、2004年度に23.7%であったものが2025年度には31.7%になると見込まれている。
仮に少子化傾向が予想以上に進んで労働力人口が現在の推計よりも少なくなると、さらに現役世代の負担は増大することになる。
したがって、社会保障制度については、高齢者関係給付の負担の多くを担っている現役世代の負担が過重なものとならないよう、世代間の給付と負担の公平に配慮しつつ、給付の効率化など各制度の不断の見直しに取り組むとともに、社会保障制度間の給付の重複の調整といった総合的な観点からの見直しを進めていく必要がある。
社会保障給付費の増加
社会保障給付費(年金や医療保険等の社会保障制度を通じて国民に提供される年間の給付総額)は、年々増大しており、2002(平成14)年度では、83兆6,000億円と、国の一般会計の総額に匹敵する規模となっている。
対前年度伸び率は2.7%、対国民所得比は23.0%となっている。
国民1人当たりにすると65万5,800円であり、1世帯当たりでは179万5,500円となっている。
日本が高齢化社会の仲間入り(人口の高齢化率が7%を超えること)をした1970(昭和45)年度には、社会保障給付費は3兆5,200億円、対国民所得比は4.7%であったが、この頃と比較をすると、経済の伸びに比べて、社会保障給付費の伸びははるかに大きい。
子ども関連産業への影響
子ども 関連の財・サービスを扱う産業にとって、子ども の数が減ることは需要数の減少要因となる。
しかし、国民の所得水準がかなり向上した今日において、子ども の数が少ないことは、それだけ子ども 一人ひとりにかける支出が大きくなることにもつながる。
現に子ども 衣料品をはじめ、子ども 1人当たりの消費支出の伸びによって、子ども 数の減少による売上げへの影響をかなり防いでいる分野もある。
また、新しい需要へ適切に対応したビジネスなど、企業の市場創造や企業の新規参入の可能性があると考えられる。
いずれにしても、子ども 数が減少していくことが見込まれる中で、子ども 関連市場は量から質の時代に移ると考えられる。
出生率 と玩具の売上げの推移をみると、出生率の推移とともに、玩具の売上げも減少している。
実際、玩具市場の中身を見ても、TVゲームをはじめ大人も購入しているような付加価値の高い商品に支えられている状況にもかかわらず、売上額は減少している。
総じていえば、子ども 数の減少により市場規模が縮小する可能性がある一方で、子ども 1人当たりの消費の増加も見込まれ、また、高齢化や女性 の職場進出にともなう新たな消費の創出や関連消費の拡大等により、当面少子化の進展が与える産業全般への影響は必ずしもマイナス面ばかりではないといえる。








